2021.05.08
医師の働き方

医師の70%は将来が不安。具体的な内容とその理由を考察

医師の70%は将来不安

医師として働く中で、みなさんは何かしらの不安を感じたことはありませんか。

「労働時間に対して給与が安い」

「体力的にいつまで働けるか分からない」

など、不安の内容はさまざまあると推察します。

今回の記事では、大手医療ポータルサイト「m3.com」が2021年に実施したアンケートをもとに、「医師の将来への不安」を解き明かしていこうと思います。

「わたしも将来が不安で…」という方は、自身を見つめ直すきっかけになるでしょう。

ぜひ最後までお付き合いください。

医師全体の70%が将来に不安を抱える

早速ですが、アンケート結果を覗いてみましょう。

”医師の将来どう思う?”

m3.comより引用

対象は国内に籍を置く「821名の医師」で、「勤務医648名、開業医173名」の内訳です。

回答期間は「2021年18日から24日」ということで、コロナ真っ只中な点も注目ポイントの一つになります。

アンケートの結果ですが、「医師全体の約70%が将来に不安を抱える」というものでした。

「意外と多いなぁ」と感じる方もいるかと思いますが、個人的には「妥当な結果」と考えています。

日本人は「幸福度が低い民族」として有名です。

国連機関SDSNの「2021年度世界幸福度報告書」によれば、日本の幸福度ランキングは世界149カ国中56位という結果でした。

前回の62位からランクアップしたとはいえ、依然としてG7(主要先進国)の中でも最下位という低さです。

ランキングが低い理由としては、日本人が本当に不幸というよりも、「不安を感じやすい国民性」や「島国という閉塞的な環境」が要因として考えられています。

このような状況の中、医師だけが不安を抱えずに生活しているとは考えにくいです。

”日本の労働者全体の58%が、職業生活に関する強いストレスを感じている”

平成30年度 厚生労働省調査より

というデータもあります。

医師の場合、「当直明けも帰宅できない過酷な労働体制」や「命を預かる精神的プレッシャー」から、平均よりも高い割合で不安を抱えていると考察されます。

では、具体的な不安の内容はどのようなものでしょうか。

医師が不安に思うこと

以下に、医師が抱える不安の内容と、その割合を示した表を提示します。

”医師の将来どう思う?”

m3.comより引用

勤務医・開業医ともに「収入面」で不安を抱えている

勤務医・開業医ともに、「約50%の医師が収入に不安を抱えている」という結果になりました。

世間一般では「医師は高給取り」というイメージが強いようですが、実際の懐事情は読者のみなさんが一番よくご存知でしょう。

”医師の平均年収は約1,240万円”

平成28年 賃金構造基本統計調査の統計データより

と報告されており、職種別には「航空機操縦士」に次いで第2位の高収入を誇ります。

ただし、この「医師」の中には開業医・大学病院勤務医・民間病院勤務医など、さまざまな労働体型が混在しています。

そのため、あくまで「医師全体の平均年収」であることに注意しなければなりません。

とはいっても、「世間一般のサラリーマンよりは稼いでいる」という事実には変わりないでしょう。

そんな高収入を得ているにもかかわらず、「医師が収入を不安に思う」のはなぜでしょうか?

ここからは私の推測になりますが、おそらくは「いつまで働けるか分からない」という不安が根底にあるのだと思います。

他の項目も見てみると、「働き方(労働環境)」「自身の体調や体力」についても、多くの医師が不安を抱えていることが読み取れます。

つまり、「今は高給与を得ているが、いつまで働けるか分からない」「いつか過労で倒れるかもしれない」という不安が垣間見えるのです。

誤解をおそれず言うなら、医師の労働環境はブラックです。

いくら給与が高水準でも、「健康を考慮すると収入が不安」という医師が多いことが考察されます。

この不安を拭うことは容易ではありませんが、根本的な解決には「将来のキャリア形成」について真剣に考えることが大切です。

医師のキャリア形成については、こちらの記事で詳しく解説しているので、興味のある方はご覧ください。(→卒後年別!医師の働く目標とキャリア形成の考え方を解説 リンク)

不安の内容に「AIの進化」があることにも注目

今回のアンケート項目には、「AIの進化などによる活躍の幅の減少」という項目があります。

ひと昔前では考えられなかった内容ではないでしょうか。

近年のAI(人工知能)分野の成長は著しく、医療分野での活躍にも期待がされています。

具体的には「CT・MRIなどの画像診断の自動化」や「問診による病名予測・近隣病院の紹介」などが、実用化されつつあります。

これは喜ばしい反面、医療従事者の仕事が奪われる可能性も示唆されています。

麻酔科医にとっても他人事ではなく、「バイタルサインの推移から今後のトレンドを推測して、自動的に薬物を調整するアルゴリズム」が開発される可能性すらあるのです。

たしかにAIの技術革新には目をみはるものがありますが、AIがすべての仕事を網羅できるわけではありません。

どんなにAIが発達しても、必ず「医師でなければ出来ない」領域があると、私は確信しています。

例えば「患者に寄り添うこころ」。

ヒトは不安を共有したい生き物です。その役割はコンピューターには果たせず、医師という存在が大きな役割を果たします。

「今後の活躍の場」が不安な方は、「AIが代行できないような技術」「患者とのコミュニケーション能力」などを意識して磨いてはいかがでしょうか。

まとめ

医師は過酷な仕事です。

近年は「医師の働き方改革」も叫ばれていますが、問題の解決には長い期間が必要でしょう。

アンケート結果からは、約7割の医師が将来に不安を抱えることが分かりましたが、その不安の大部分には「医師の労働環境」が関与しているようです。

「所属する医局の事情」や「病院の経営方針」など、さまざまな事情があると推察しますが、不安の根本的な解決には「自身ともう一度向き合う」ことが大切です。

キャリアアップ、収入、ライフワークバランス…。

本記事をきっかけに、何を最重視するか考えてみてはいかがでしょうか。


著者 広下 若葉

現役医師ライター。

麻酔科医として勤務する一方、ライターとして数々の作品を執筆。

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