iDeCo(個人型確定拠出年金)は「節税効果を享受しつつ、退職後の資産を形成できる制度」です。
なぜなら、毎月一定の金額を拠出して資産形成できるだけでなく、拠出金額を全額、所得から控除できるからです。
加えて、「運用利益は非課税」というメリットもあります。
しかし、これらのメリットを最大限活かすには「4つの注意点」があります。
あらかじめポイントを理解してから制度を始めることで、より効率的に資産を運用できるでしょう。
そこで、今回の記事では「医師がiDeCoを始める前の注意点」を4つのポイントからお伝えします。
「こんなはずじゃなかった!」と後悔しないためにも、iDeCoの注意点を把握してから制度を利用しましょう。
iDeCoの正式名称は「個人型確定拠出年金」。
「年金」というワードのとおり、その目的は「老後に向けた資金形成」です。
そのため、iDeCoで積み立てた資金は原則「60歳」まで引き出すことができません。
例えば、「預金」について考えてみましょう。
「普通預金」であれ「定期預金」であれ、想定外の大きな出費があった場合は、これらを解約してすぐに現金化することができます。
一方、iDeCoは原則60歳まで引き出すことができません。
仮に早期退職をした場合でも、60歳まで継続して積み立てる必要すらあります。
そのため、iDeCoで運用する資金は「必要資金を差し引いた余剰金」を活用しましょう。
たしかに原則60歳まで引き出せないことはデメリットですが、見方を変えれば、自身の支出を見直す絶好の機会と捉えることもできます。
家計簿をつける習慣のない方は、iDeCoを機に家計簿にチャレンジするのもおすすめです。
iDeCoを始める際には、運用前に家計の収支を見直し、必要資金を差し引いた「余剰資金」を積み立てることを意識しましょう。
iDeCoの拠出金額には上限があります。具体的な上限金額は、勤め先の条件等によって個人差があります。
例えば開業医の場合は、自営業主に該当するため「月額6万8,000円」を拠出可能です。
一方、勤務医の場合は、勤め先が企業年金に加入しているかがポイントです。
企業年金に加入していなければ「月額2万3,000円」、加入していれば「月額2万円」が上限になります。
いくら資金が潤沢な医師でも、勤務医かつ勤務先が企業型年金に加入していれば、月額2万円までしか投資できません。
投資額が少ないと投資利益が減るだけでなく、「小規模企業共済等掛金控除」で控除される所得控除額も少なくなります。
実際にiDeCoを始める前には、自身の拠出上限額を確認しておきましょう。
上限額を自分で決められないのは大きなデメリットですが、決まりなので致し方ありません。
iDeCoは「年金制度」の一つですが、「投資」の側面も有しています。
拠出金額で投資信託などの金融商品を運用するため、「元本割れ」のリスクが常にあるのです。
「定期預金型商品」を選べば元本は保証されますが、その分リターンも小さくなってしまいます。
個人の性格や他資産との兼ね合いもあるため、一概に「この商品がいい!」ということは出来ませんが、あえて一つ選ぶのであれば「全世界株式型のインデックスファンド」をおすすめします。
仕事が忙しい医師の場合、リバランスやスイッチングなど、購入後のメンテナンスは極力少ない商品がベターだと思います。
「全世界株式型のインデックスファンド」であれば、世界経済の成長に合わせた着実な資産形成に期待できます。
代表的なベンチマークは「MSCIオール・カントリー・ワールド・インデックス」です。
一度、ご自身で商品を探してみてはいかがですか。
iDeCoを始めるにあたり、いくつか必要な手続きがあります。
具体的には、運用する金融機関を選び、手続書類を入力して、iDeCo専用口座を開設する必要があります。
そして、無事口座を開設できたら、運用する金融商品を選び、購入して、やっと運用が開始されます。
公的年金であれば、掛け金は給与から自動で天引きされますし、書類手続きも事務が勝手に処理してくれます。
それに比べると、iDeCoの煩雑さに驚く方も多いでしょう。
仕事が忙しい医師とっては最大の問題かもしれません。
iDeCoは、資産を形成しながら節税ができる年金制度です。
特に医師の場合、所得税率が高いことから大きな節税効果を期待できます。
また、転職が多く退職金に期待が出来ない場合でも、iDeCoで個人年金を積み立てれば安泰な老後をおくれるでしょう。
本記事で触れた注意点に気を付ければ、iDeCoはきっと強い味方になります。
みなさんも本記事をきっかけに、iDeCoを始めてみてはいかがでしょうか。
著者 広下 若葉
現役医師ライター。
麻酔科医として勤務する一方、ライターとして数々の作品を執筆。
麻酔科専門医の竹森が地方での深刻な麻酔科医不足を解消するために設立した一般社団法人です。
麻酔科医の重要性の啓蒙、麻酔科医の専門技術・知識の更新をサポート、
地域の医療水準向上への協力を理念に掲げ、質の高い麻酔科医を紹介し、総合的により安全かつ
円滑な手術室運営に貢献してきました。
2024年度から実施される医師の働き方改革に向けた取り組みもおこなっていきます。
クローズドな麻酔科医ネットワークとは別にオープンな医師紹介の需要にも応えるため、
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